レビュー:映画『名前』

6月30日より新宿シネマカリテ他全国で公開中の映画『名前』。

「名前」といえば、夢枕漠による著書『陰陽師』の一説にあるように、この世で一番短い呪い、すなわち社会において人を縛り付けるものだ。
人生における失敗も、他者からの認識も、これまでの積み重ねも全てその名前が背負っていて、履歴書にかきあらわすことができないほど膨大な自分の履歴が名前には詰め込まれている

(C)2018 映画「名前」製作委員会

名前を変えたからといって丸っきり別の人生を歩むことは不可能だが、中村正男のように徹底して別人になろうとすればそれに近いことは可能なのかもしれない。しかし架空の他者を演じているうちに今度はその役を全うしなければいけないという責任感も湧き上がって来る。彼がいくら誰を演じようとそれが結局は津田寛治という名前の役者が中村正男や鈴木太郎を演じているのと同じように。
一方で、葉山笑子は名前の通り「葉山笑子」として生きているのに誰も「葉山笑子」を知ってくれないと主張する。

(C)2018 映画「名前」製作委員会

中村正男と葉山笑子、この二人をめぐる物語はそれぞれ3つの章で構成されている。名前を変えることで本当の自分から逃げ出したい男性と、自己が何者なのか、ひいてはその出生を探し求める女子高生。
名前があるからこそ物事が分かりやすくシンプルであるように、一見この物語もそうかと思いきや、名前があるからこそそれは複雑な展開を辿り意外な結末を迎える。

(C)2018 映画「名前」製作委員会

■『名前』
■公式HP:https://namae-movie.com/
■監督:戸田彬弘
■原案:道尾秀介
■脚本:守口悠介
■製作統括:井川楊枝
■プロデューサー:前信介
■上映時間:114分
■キャスト: 津田寛治:中村正男
駒井蓮:葉山笑子
勧修寺保都:榎本翔矢
松本穂香:小幡理帆
内田理央:高野結衣