短評:『泣き虫しょったんの奇跡』

「将棋界に本当に起きた、感涙必至の逆転サクセスストーリー」

将棋棋士・瀬川晶司氏の自伝的ノンフィクション小説を原作にした作品で、主演をつとめた松田龍平と豊田利晃がタッグを組むのは映画『青い春』(2001)以来。

最近は藤井聡太さんの活躍もあり将棋シーンが盛り上がってますね。自分にとって将棋は未知の分野で、『ハチワンダイバー』や『3月のライオン』といったコミックや、棋士をテーマにした映画などを通して触れる程度なのですが、気になる世界ではあります。

将棋の映画といえば『3月のライオン』の映画化や、松山ケンイチ主演で実在の棋士・村山聖の生涯を描いた『聖の青春』などが記憶に新しいかと思います。どちらも素敵な作品ですが、『泣き虫しょったんの奇跡』はその二作に比べると多少地味な印象を受けるかもしれません。ドラマチックな展開は終盤までほぼなく、しょったんの半生が坦々と描かれます。

(C)2018「泣き虫しょったんの奇跡」製作委員会 (C)瀬川晶司/講談社

今回この映画を通して、奨励会には年齢制限が設けられているということを初めて知ったのですが、しょったんはその期限が目前に迫りつつも現実逃避するかのようになかなか将棋に向き合おうとしません。結果、しょったんは将棋の世界から一度離れてしまいます。

(C)2018「泣き虫しょったんの奇跡」製作委員会 (C)瀬川晶司/講談社

とはいえ結末としては、逆転劇を巻き起こし棋士として成功していくわけですが、その結果をおさめるまでのじれったさ、焦り、挫折、諦め、これらが丁寧に描かれておりそれゆえに派手なところのない作品ではあるのですが、誰もが身に覚えのある若き日のほろ苦い記憶を思い起こさせるのではないでしょうか。

(C)2018「泣き虫しょったんの奇跡」製作委員会 (C)瀬川晶司/講談社

この作品にはたくさんの人物が登場します。
登場する一人当たりの時間は決して長くはないものの、127分間という上映時間のなかでしょったんとかかわった人、その人がしょったんにかけた言葉の数々が『泣き虫しょったんの奇跡』を引き起こす要素になっていて、その見せ方は単なる回想シーンの連続ではあるのですが、しょったんだけでなく、しょったんに希望を託した人たちが報われたとも捉えることのできる感動的な結末を迎えます。

(C)2018「泣き虫しょったんの奇跡」製作委員会 (C)瀬川晶司/講談社

■『泣き虫しょったんの奇跡』
■公式HP:http://shottan-movie.jp/
■監督:豊田利晃
■原作:瀬川晶司
■脚本:豊田利晃
■音楽:照井利幸
■上映時間:127分
■キャスト:松田龍平
     野田洋次郎
   永山絢斗
   染谷将太
   渋川清彦