短評:『きみの鳥はうたえる』

「函館の夏、まだ何ものでもない僕たち3人はいつも一緒だった― 佐藤泰志の原作をもとに、若手実力派俳優と新鋭監督がつくりだした、今を生きる私たちのための青春映画」

先日、映画好きの友人と食事をした。
彼と会うとだいたい映画の話で盛り上がるのだが、最近観た映画の中で何が良かったかときくと、「僕は三宅唱信者なんだけど」と切り出し、「『きみの鳥はうたえる』が良かった」と言った。

私もその頃ようやく(映画好きの間ではだいぶ以前から話題になっていた)観ることができて、今もなおこの映画の余韻に浸っている。

不勉強ながら三宅監督のことは今回の作品で知ったのだが、たいへん素晴らしい監督であり、その過去作品を観ることは容易ではないため、前述した友人が過去にどこかの映画館で開催された「三宅唱特集上映」なるもので『Playback』をはじめとする初期作品など観れるものはすべて観たというのが羨ましかった。

佐藤泰志の作品を原作とした函館3部作、そして『きみの鳥はうたえる』。
作家の世界観を踏襲しつつもそれぞれの監督による絶妙な解釈によりどれを観てもハズレがない、おそらく原作ファンも安心して観ることができる貴重なシリーズではないだろうか。

(C) HAKODATE CINEMA IRIS
(C) HAKODATE CINEMA IRIS
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この映画でとくに印象的なのは、3人でつるんで遊ぶなかで最も丁寧に、時間的にも長めに撮られている(ような気がするし、石橋静河のダンスやHi’Specをみせるシーンだと感じた)クラブのシーンなのだが、エンドロールでHi’Specの曲が終わり、鳥がうたいはじめたところで、それが思い起こされるのだ。
遊び疲れてクラブのドアを開けると「もう明るいじゃん」というあの感じ、独特な青みがかった朝の色、眠い電車のなか…そして家路につく道すがら聞こえてくる鳥の歌声、という風に自分の経験と映画のシーンを交錯させながら連想していくうちに、すべて物語が終わったいま、彼らの過ごした時間がもう一度蘇り、それがまた余韻として残る。

(C) HAKODATE CINEMA IRIS

いびつな恋愛関係と友情のはざまにある3人の不思議な関係性は、傍からみていて決して心穏やかなものではない。かといってことさら彼らはそれに言及することはなく、しかし少しずつ互いの距離がずれていく感覚、迫り来る変化への息苦しさは端々に感じられる。ただ3人の胸のうちを感覚的に想像し、彼らを目で追い続ける。小さな変化の積み重ねにより物語りは静かに展開し、結末もまた小さな変化により静かに終わりを迎える。

(C) HAKODATE CINEMA IRIS

■公式HP:http://kiminotori.com/
■監督・脚本:三宅唱
■原作:佐藤泰志
■企画:菅原和博
■製作:菅原和博
■上映時間:106分
■配給:コピアポア・フィルム