短評:『止められるか、俺たちを』

21歳で”若松プロダクション”の門を叩いた吉積めぐみの目を通して、若松孝二と共に映画、青春、そして恋、なにもかもが危うくきらめいていた一瞬の時を描く、青春群像劇!

9月中旬に私用で名古屋へ行った。予想外に用事が早く済んだせいで時間を持て余してしまい、旅先で映画を観るのもありかなと思って調べていたところ、1983年2月に若松孝二監督が立ち上げたという「シネマスコーレ」という映画館があることに気付く。
残念ながら、いざ上映時間を調べてみると微妙に時間が合わないし、すでに観た作品だった。

ちょうどその1ヵ月後に『止められるか、俺たちを』が封切りに。

(C)2018 若松プロダクション

イントロダクションにもあるように、この映画は門脇麦演じる吉積めぐみの目を通して描かれているのが肝だ。若松孝二のすごさというのを、彼の作品を観たことがない人でも分かるのが、例えば彼が撮影現場に現われた瞬間、それまでもたついていた撮影が一気に進む。
「こっから、ワンカットでばーっと撮って!」というようなそれだけの指示で…。
若松監督には、撮りたいものが常に頭のなかにあって、それをただ映画にしているだけで、たぶん、なぜそういう風に思いつくんですかと聞いても言語化するのが難しいタイプの人なのだろう。

(C)2018 若松プロダクション

私はこの映画を観ながら当たり前だが、めぐみの心情にかなり寄り添っていた。
いつまでも助監督ではいられない、しかし撮りたいものは見つからない。
はじめて抜擢された監督作品では才能の稚拙さを自覚させられる。
パレスチナから帰国以降の若松監督がやがて政治的な方向へと転換していくことへの違和感なども、分かる気がする。
若松監督自身は何も変わっておらず、ただ撮りたいものを撮っているだけなのだが、そういった微妙な変化が引き起こす疎外感など、色々などん詰まりがやがて彼女を追い詰めていく。

(C)2018 若松プロダクション

白石監督が、青春群像劇?と意外な印象を受けたが、実際に観てみるといつも通りと言っては語弊があるかもしれないが、白石監督の作品を鑑賞した後にのこる残酷さやヒリつきがあった。しかしこの映画を多くの人に、とりわけ(もしかするとこれを観るのはきついいことかもしれないが)何かにしがみついて頑張っている人に観てほしいとおもう。

(C)2018 若松プロダクション

■監督:白石和彌
■脚本:井上淳一
■公式HP:http://www.tomeore.com/
■上映時間:119分
■配給:若松プロダクション、スコーレ